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🎤「子どもの権利条約市民・NGOの会」から国連の特別報告官へ送った情報提供

  • 4月18日
  • 読了時間: 11分

※For the English version, please download the PDF below.


記事作成:2026/04/18

2026年1月23日

【包括的性教育推進法の制定をめざすネットワーク事務局】 


日本の子どもたちに、

権利として「包括的性教育」を届けたい



 日本における「性教育」はどうなっているのか?人間が生きていくうえで「性」は「当たり前」のことであり、だからこそ大事な権利として位置づけ話し合い学び合うことが、子どもにとって必要なことです。日本の「性教育」の歴史を振りかえり、それが現在にどうつながっているのか知っていただきたいと思います。




1.日本の性教育の歴史


 日本では長い時期、「性」は恥ずかしいことであるとの考え方があり、く「純潔教育」「性欲教育」「寝た子は起こすな」といった言葉がよく流れ、結婚するまで「性」は扱わないという考え方を主張する団体や、政治家が力をもっていました。それでも「性」を人間の権利としてとらえる世界の流れがわき起こる中、日本でも1972年科学的な性を根付かせようと日本性科学協会(JASE)が誕生し、文部科学省とも連携をとりながら、性教育実践者を育てることにも積極的に取り組まれるようになりました。1981年には国からの支援を受け全国性教育研究団体連絡協議会、1982年には民間の団体である〝人間と性″教育研究団体の誕生へとつながっていったのです。そういった流れを受け、1992年には「性教育元年」とも言われ、日本でも本格的に小学校からの「性教育」が取り組まれていくようになっていきました。当時は、すべての子どもにとって大事な「性」をどう伝えるか、多くの学校の教員たちが学びあい工夫しあっていました。子どもの実態に応じた様々な実践を交流し、話し合いを深め、子どもたちに権利としての「性」を届ける学習が確実に始まっていったのです。しかし、一方でそれをよしとしない一部の政治家と宗教団体が力を合わせ「性解放思想に基づく性器・性交・避妊教育に反対」との声を上げ、国会でも「性教育」を問題視する発言が出てくる事態となっていきました。当時、ジェンダーバッシングから始まった一部の政治家たちの動きは、徐々に性教育バッシングへと進んでいったと言われています。動きが強まる中起こったのが、2003年、東京都立の知的障害児の学校(七生養護学校)で、子どもの実態に合わせ取り組まれていた「性教育」が、政治介入された事件です。東京都の教育委員会に年間指導計画も提出し認められていたはずの「性教育」が、都議会での突然の質問に答える形で当時の都知事・教育委員長が「性教育」を問題視したのです。直後から七生養護学校への政治介入が始まり、教材は一切奪われ「性教育」ができない状況となりました。それは当然、他校での性教育実践や教材も標的になりました。更にその攻撃は、東京都だけでなく日本全体に広がり、進められてきた「性教育」が、確実に弱められていったのです。もちろん納得できない七生養護学校の保護者・教員たちは提訴、10年後に勝利判決を得るのですが、その10年の間に学校での「性教育」は確実に影をひそめていったのです。

 現場の教員たちにとって「性教育」を取り扱うことの厳しさは続きました。それでも子どもの権利として必要と考えた東京都足立区中学校の先生が、子どもの実態に応じ「性教育」の授業を丁寧に取り組み、時には公開までしていました。それが同じ政治家によって、2018年再び攻撃を受けたのです。その時には、地域や関係者からの大きな支援もあり、足立区としても子どもにとって必要な教育であるとの見方で対応し、屈することにはならずにすみました。

 こういった事件が起きると、学校現場はその対応に追われてしまいます。そうでなくとも日々多くのことに向き合わざるを得ない学校現場。だからこそ、子どもの権利としての「性教育」の重要性を、日本の中に位置づけたいのです。

 徐々にではありますが、「性教育」を子どもたちに届けたい声は確実に増えています。様々な専門家・当事者たちが「性教育」の考え方やについて発信し、関連する本も多く出されています。実践の内容も工夫が進み、性の学びや教材の工夫などに関する本もたくさん出ています。現在の日本の学校では、基本的には現場教員ではなく医師など外部講師を依頼することがほとんどです。最近は、助産師さんに依頼することが増えています。また、助産師さんたちも子どもたちに届けたい思いを強く持ち、時には力を合わせ性教育内容や教材など、工夫しあっています。しかし、実態は学校で行う「性教育」は年一回だけという事例が多く、子どもたちに伝えきれない思いをもっている助産師さんの声もよく聞きます。また、「性交」や「妊娠」なども伝えたいと準備していったところ、検閲が入ることを恐れる学校側に拒否され、自分の伝えたい内容には入れず悔しい思いをした、との声も聴きます。何よりも問題視されているのが、教員たちとのつながりがうまく持てないことです。実際の学習場面に、参加できる教員は少ないとのことです。管理職あるいは学習会の担当者のみ参加ということが多く、子どもたちに届けたことを、より深める・より具体化する・より関係化するといった次につながる・拡がる方向性が見えないとの声が聞こえてきます。子どもたちに必要な「性教育」を、まともに届けるためには、専門家たちの協力は必要ですが、日々学校生活を共にする教員たちが、出会った子どもたちの実態に応じて様々な場面で、もちろん授業としても工夫し続けていくことが大事なのではないかと思います。




2.学習指導要領の問題点


 日本の学校で「性教育」が位置づかない原因の一つに、学習指導要領の存在があります。今年はちょうど改定の時期となり、専門家たちによる検討が始まっています。一部の宗教家・政治家たちによる「性教育」に対する否定的な発言や動きが強くなっていた時期である1998年、学習指導要領改訂が取り組まれ「はどめ規定」と一般的に言われる内容が盛り込まれました。小学校5年生の理科では「受精に至る過程を取り扱わないものとする」と明記されています。また、中学校保健体育の扱う項目の中には「妊娠の経過は取り扱わないものとする」とあります。「受精に至る過程」「妊娠の経過」は扱わないことになっているのです。つまりは、人間にとって当たり前に必要である「性交」「避妊」「人工妊娠中絶」などの知識を学ぶことが出来ない状況となっているのです。これが、日本の性教育における「はどめ規定」と言われているものであり、現在もそれが生きています。国の教育を取り扱う文部科学省は「はどめ規定」にはとらわれず、必要に応じ子どもに学ばせることを認めると言いますが、同時に「個別的な対応で取り組むように」との見解が出てきます。人間が育ち生きる上で、科学と人権を基にした「性」は、隠す事ではなく学ばなくてはならないことです。

 子どもにとって「性」は、自分であることの大事な項目の一つであり、小さいときから当たり前のこととして大切に学ぶことは重要です。人間としての共通性そして個別の違いを、やり取りをしながら深めていく・学びあっていくことは、人間関係をつくる大事な内容でもあります。「性」について、自分の気持ちに気づき、言語化できること、伝えられるようになることは、人間関係をつくる基本的な力になっていきます。また、自分とは異なる感覚や気持ち・意見に出会うことも、大人に向かう大事な力となります。その意味では、個別に学ぶことではなく、やり取りができ、学びあえる集団が必ず必要です。大事な「子どもの権利」として、保育・学校教育の中に「包括的性教育」を確実に位置づけていってほしいのです。




日本の子どもたちに「包括的性教育」を


 今、世界で拡がっている「包括的性教育」は、日本の学校教育の中には位置づいてはいません。地域によっては、子ども向けの「包括的性教育パンフレット」を作成している事例もありますが、ある場所に置かれていて、自ら求めてくる親、子どものみへの配布としているそうです。置かれているのが遠い場所であったり、それがあることすら知らなかったりと、結果すべての子どもにいきわたる形にはなっていないという現状がわかりました。理由を問うと、反対の声が出てくるためとの説明でした。頑張ってパンフレットを作成している地域であっても、子どもたちには届きにくいというのが現実です。「子どもの権利」として、それはどうか考えたらよいのでしょうか。自分が生きる上で当たり前のこと、また人間には共通することと違いがあること、それを知ること理解することは、大事な学びです。「性」も特別なことではなく、学び合うことで「当たり前なこと」になっていくはずです。年に何回か、大学生に「包括的性教育」を伝えに行くことがあります。彼らから送られてきた声に今の日本の状況が現れていますので、感想を一部ですが紹介します。


「性教育がなかった、あっても扱いが軽いものだと、自分の性に関する考えも雑になってしまうように感じました。包括的性教育をしっかり受けていれば、悩んだときに考える材料になったり、考える、悩むこと自体への疑念などが減ったりして、生きやすくなるのではないかと思います。私自身、自分のジェンダーについて考えることがありますが、考え付いた先の結果を受け入れるかどうかは、まだわかりません。これも含め、自分の性・ジェンダーを軽んじているとは思っていませんが、本来はさらにもっと大切にすべきものなのであり、その考え方を得るにはやはり教育が欠かせないのかもしれないと気づけました」


「日本だと性教育が保健体育などの授業の中ほんの一コマに過ぎず、こんな浅い教育だと言葉の中身や歴史的な背景が伴わず、言葉が一人歩きすることも多いような実感があります。日本ではまず、言葉が遊ばれているような状態を切り抜ける必要があると思います。正しい言葉を教えるだけではなく、子ども自身により近づけられるように教育を通じて伝えていくことが重要に感じました」


「バッシングを恐れて、性教育が疎かになったことが、性自認に悩んでいる方の自己の理解の機会も遅らせていたことを知りました。これは子どもの権利条約を知ることができないことにもつながり、子どもの権利を侵害していると思いました」

「性的少数者は、日常的に偏見や蔑視にさらされることが多く、生きづらさを抱え、自殺者が多い事が問題となっていることを記事で見たことがあります。私は学校でLGBTのことは学ぶ機会はなく、学校でいじめに使われていた時にLGBT関連の言葉を知りました。その後、自主的にYouTubeや本でしらべ、性ははっきりしているものではなく、人によってグラデーションがあり、また変わることも普通であり、グラフで表すことの方がより正確であるという動画を見た時はすごく感動しましたし、なんでいやらしいことでもなんでもないのに教えてくれないのだろうと悲しく思ったのを覚えています」


 私が話をする前に「性教育を受けてきた方、手を上げてください」と伝えると、自信なさげではありますが、かなり多くの学生さんが手を上げてくださいました。それでも「包括的性教育」の中身をお伝えした後の感想には、本当の「性教育」は受けてきていないと多くの学生さんが気づき、感想をいただきます。これが日本の現実であり実態でると思います。




4.教員の「多忙化・負担」軽減の中でこそ、実現する「包括的性教育」


 様々な地域の方たちから声をいただき、親向けの「包括的性教育」の学習会を行うことがあります。その中でよく聞くのが「私たち親が、学んでいないことがよくわかりました」「性のことは、言ってはいけないことと思っていました」「夫とは、話してはいけないと思っていました」という声です。夫婦ですぐに話せなくてもよい、でも時間をかけても「性」は普通に話してよいこととしてとらえてほしいと伝えます。その意味では、子どもの権利として「包括的性教育」を日本に実現していくためには、大人の学びも欠かせないのです。

 学校の教員たちにとっても、ある意味同じ事が言えます。学校教員たちが「包括的性教育」を学ぶ場、時間を、どうつくるかです。今、多くの学校ではクラスの子どもの数の多さ、教員が教えなくてはいけない学習内容の量の多さなどでかなり疲れ切っています。また、授業だけでなく、保護者や管理職に提出しなくてはいけない書類量の多さに追われている実情があります。その実情が社会に知られたことで、必要な教員数の確保すらできなくなっている現実さえ起きています。そこに対する正しい対応がされない限り、教育そのものが弱っていくと思われます。子どもたちに権利としての「包括的性教育」を伝え考えあっていくことの実現に向けて、学校現場の厳しい状況の改善をはかる必要も、強く訴えます。

 日本の子どもたちに「包括的性教育」を当然の権利として当たり前に届けたい。文科省による「性教育」では、「学校における性教育については,子どもたちは社会的責任を十分にはとれない存在であり,また,性感染症等を防ぐという観点からも,子どもたちの性行為については適切ではないという基本的スタンスに立って,指導内容を検討していくべきである」「性教育を行う場合に,人間関係についての理解やコミュニケーション能力を前提とすべきであり,その理解の上に性教育が行われるべきものであって,安易に具体的な避妊方法の指導等に走るべきではない」とあります。文科省と内閣府が連携し、有識者の意見も踏まえ、生命(いのち)の安全教育のための教材及び指導の手引きを作成し、教育現場にも広げています。「生命の安全教育」は、内容からてらしても「包括的性教育」には全く届いていません。実際にそれを学んできた障害のある青年たちと「包括的性教育」の学びをしたところ、人との関わりをもつことに怖気ついてしまう状況が見られました。「見せてはダメ」「触ってはダメ」が最初から強く出てくるのです。まずは自分のからだを知ろう、自分を大事にするところから、他の人も同じ、みんな大事につながるはずです。

 日本でも「包括的性教育」を取り入れ、子どもたちに一人ひとりの権利を大事にすることを確実に届けていきたいのです。




2026年1月23日 包括的性教育の推進法ネットワーク 

事務局長 日暮かをる




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包括的性教育推進法制定をめざすネットワーク

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