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🔖 包括的性教育とは?

更新日:2023年11月27日


包括的性教育ってなんだろう?


🔶 「包括的性教育」という用語は最近よく目にし、耳にするようになってきました。Yahoo! JAPANで検索しますと、2億3300万件がヒットします(2023年9月7日現在)。これほど多くヒットするまでになっています。包括的性教育の内容は書籍や絵本、研修会などでだんだんと理解が広がっていると感じていますが、学校や子どもの居場所などで、子どもたちにもっと語っていくことができるようにしたいですね。


たくさんの課題とテーマに対応する


🔷 包括的(ほうかつてき)と性教育が合体した包括的性教育って、なんでしょう。包括的というのは、さまざまな課題を落ちこぼすことなく対応するという意味を持っています。


性教育のイメージは、これまで学校の保健体育などで学んだ月経・射精、性器のしくみ、妊娠・出産などに限定されるのではなく、もっともっと多様で、幅広い課題を学ぶことが用意されています。


具体的な課題をあげますと、人間関係、多様な家族、友情、愛情、恋愛関係、親になること、価値観、人権、文化、ジェンダーの理解、ジェンダー平等、暴力、同意、バウンダリー(境界)、からだの権利、虐待、プライバシー、ICTの安全な使い方、意思決定、コミュニケーション、性情報、メディアリテラシー、援助と支援、生殖、(前期)思春期、ボディイメージ、セックス、セクシュアリティ、生涯にわたる性、性的行動、妊娠、避妊、健康、HIVとエイズ、ケアとサポート、性感染症リスクの理解など…、人の成長・発達と日々の暮らしのなかで起きる問題すべてに対応できることをめざしている性教育です。いまの学校のカリキュラムでは全部を勉強することはなかなか難しいですが…。もっと性教育の授業時間があるといいですね。


年齢に応じたプログラムを展開


◇ たとえば、ユネスコ編「改訂版国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(以下、「ガイダンス」)では、学習の基本的な柱(キーコンセプト)として、

  1. 人間関係

  2. 価値観、人権、文化、セクシュアリティ

  3. ジェンダーの理解

  4. 暴力と安全確保

  5. 健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル

  6. 人間のからだと発達

  7. セクシュアリティと性的行動

  8. 性と生殖に関する健康

が設けられています。


それぞれの柱に即して、4つの年齢グループごとに(①5~8歳、②9~12歳、③12~15歳、④15~18歳以上)学習目標が立てられており、繰り返し学習するしくみになっています。そうして「学習者ができるようになること」が列挙されることで、すべての年齢に応じてオールラウンドに学ぶことができます。


ただし、「ガイダンス」は、0歳から4歳までは学習年齢となっていません。こうした空白課題を具体化することも私たちの課題として研究をしたいものです。


包括的性教育までの道のり


🔷 「性教育」といっても、その内容はいろいろとあります。決して性教育とはいえない内容ですが、結婚や婚約をするまでは“純潔”(セックスをしない)でいることを、ひたすら教え込む宗教や特定の考え方をおしつける❶純潔教育があります。


また、性行動がさまざまな性のトラブルを生じさせることを強調する❷性の恐怖教育=性恐育、性脅育が現在もみられます。たとえば、インターネットで広がっている「テクノブレイク」もそのひとつです。マスターベーションをしすぎると死ぬ!という情報がまことしやかに流されているのもその一例です。


さらに、現在の日本でまだ影響が残っているのが、❸「抑制的性教育」の考え方です。性教育は「寝た子を起こす論」という誤った認識によって、必要な学びの課題を制限する性教育の考え方があります。性教育の内容で、学習指導要領に記載されている、いわゆる「はどめ規定」は2か所あります。ひとつは小学5年の理科「人の受精に至る過程は取り扱わないものとする」、もうひとつは中学1年の保健体育科「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という記述となっています。どうして教えないこととなっているのか、いまだにその理由は明確にされていないのが日本の性教育政策の現状です。性教育の内容にだけ、はどめ規定を設けることで、性教育をすすめることにブレーキをかけていることも大きな問題です。私たちはこうした学習指導要領における“はどめ規定”の撤廃を強く求めています。


そのうえで❹包括的性教育が欧米において、1980年代から確実に世界の性教育のスタンダード(標準)としての位置を築き、世界の性教育をレベルアップさせているのです。世界の国々で包括的性教育は、それぞれの国の状況に応じて発展・進化してきているのが現状です。


こうした❶〜❹の内容が、世界においても、日本においても混在しているのが実際ですが、確実に包括的性教育はその実践の効果が評価されており、日本でどのようにすすめていくのかが求められています。


世界の英知を集めた包括的性教育


🔷 包括的性教育は、今日までの世界の性教育実践と研究の英知を集めた現在進行形の科学と人権をベースにした性教育です。ユネスコやWHO、ユニセフ、国連人口基金などが協力してまとめた性教育のガイダンスで、各国の性教育実践と研究に大きな影響を与えています。


包括的性教育の学びは、そう簡単ではありません。わかりやすく説明する努力と工夫をしながら、やはりこれまでの性教育実践を踏まえて、新しい知見を学ぶ努力と性教育実践を具体化することにチャレンジする勇気が問われているのではないでしょうか。


ぜひ、包括的性教育の理論と実践をともに学びあいましょう。


  • 現在、国際的スタンダードとなっているのは「改訂版国際セクシュアリティ教育ガイダンス」で、その内容については、ユネスコ編、浅井、艮、田代、福田、渡辺訳『改訂版国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(明石書店、2020年)、および浅井春夫、谷村久美子、村末雄介、渡邉安以子編『「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」活用ガイド』(明石書店、2023年)を参照されたい。


  • また、わかりやすく包括的性教育を説明した浅井監修『パンでわかる包括的性教育』(小学館クリエイティブ、2023年)は、多彩なイラストに解説をしていますので、参考にしていただければと思います。


包括的性教育を自らの持ち場で切り拓いていくためには、大いなる学びのチャレンジが求められているのではないでしょうか。


包括的性教育推進法制定をめざすネットワーク

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